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さて、私はこのブログなどで何度も、世界トップレベルの漕ぎはすごい、ということを言ってきました。
国内よりも世界のレースを見て、参考にしてほしいと思っています。ある一定レベル以上の選手は、日本基準ではなく、国際基準でRowingを考えた方がよいと思います。
国内のクルーより世界トップのクルーのほうが断然タイムが速いのです。タイムが速いということは、内容が優れているということです。艇の動かし方、リズム、リラックス、そして技術としてのパワーが素晴らしい。飛ぶような艇の動き、ドライブでグリップではなく「脚や身体」と「艇」が直接つながる感覚の生み出すパフォーマンス。これは彼らが意識して身につけた技術の粋なのです。そしてダイナミックさや迫力、攻め続ける中でさらに勝負どころでの限界を超越していく意志のバトル。
これらを見て、感じてほしいのです。何度も繰り返し見れば、自分が彼らになったつもりで感覚をイメージすれば、きっと自分にもできたという境地に至るはず!

このブログを始めたときから伝えたかったことの一つです。世界トップのRowingはすごい!すごいけど身近に感じてほしい。
そして、「守・破・離」であります。師匠に教わるわけではないですが型を修練する如く、世界トップの漕ぎを研究し真似るかのようにコピーしたり感覚イメージを盗んで、そして完全に自分の感覚としてマッチし矛盾のない確信の動きを作り上げたら、その後は彼らのイメージと感覚を超えるパフォーマンスを作り上げたい。これが私の長年のテーマだったんですよね・・・。まだまだ遠いんですが!

2000年シドニー五輪では、素晴らしい名レースがたくさんありましたので、厳選したレースをご紹介します。というか、You Tubeで発見できたものだけなんですけど・・・。
ちょうど私がコーチを始めて2年目あたりだったので、何度も見て研究したり思い入れがあるというのも、おすすめしたい理由です。それと、シドニーの決勝レースはカメラワークが最近のと比べて見やすいし色んなアングルとアップになるシーンがあって、人と艇の動きが見やすいというところもあります。5ストロークくらいは、しっかり同じショットがないと、なかなかお手本としての参考になりません。

また、世界のレースは、選手が全然分からん!ということで興味をあまり持てない方も多いと思います。最初は皆そうなんじゃないでしょうか。
ボートのレースなんて、初めて実際に見た人は「なんか遠くてよくわからない」とか、「すぐ目の前を通り過ぎて終わっちゃった」とか、はじめはそんなものだと思います。テレビ画面でずっと追いかけるレースシーンを見ても、違いがよく分からなかったり、何が良いのかすごいのかいまいち分からなくて、退屈です。しかし、見慣れてきてボートがわかってくると、かなり目まぐるしい展開なんですね、これが。接戦だと特に目が離せません。また、かなり頻繁に選手はアクションを行いますよ。
前提として、どのクルーもレースに対してそれぞれの思惑や意思を持ってレースに臨みます。ボートは体力戦、技術戦だけでなく心理戦なのです。展開の中でも、スタートはどこまで引っ張ろうかとか、落ち着いてここは安定フェーズでキープだろうなとか、この局面は一気に攻めていて勝負かけたな!とか、攻めのコンスタント、守りのコンスタントと、押されてる、ノッている、などパフォーマンスを見ればだんだん分かってきますよ。選手が隣のクルーを見たり(眼だけで追ったり)、表情で焦りや集中力が読めるし、バウを始め漕手の口パクがあったりすれば、気合をつけたのか、イベントが入ったのかも推測できます。
そして、ライバル関係やストーリーももちろんあります。どんな流れでこのレース、大一番を迎えたのか・・・。だって、我々学生のレースひとつひとつにだって、すべてそれがあるじゃないですか。

ということで、ある程度の解説をつけておきます。ソムリエやコンシェルジュではないですが、「これがすごいんですよ!」という案内や見どころの解説、予備知識があると、興味を持っていただけるかなと。私の場合、スポーツだけでなく、映画とか芸術など、解説や情報がないとあまりよく分からなくて楽しめないほうなので・・・。



・シドニー M2-決勝
このレースは、あまりにも驚きのレースです。
優勝候補は、堂々3レーンの地元オーストラリアが大本命・・・のはずでした。名選手トムキンスと、パートナーであるジン選手とのオーストラリアのペア。整調のジェームズ・トムキンス選手は、バルセロナ、アトランタと2大会連続M4-で金メダルを獲得しており、ドリュー・ジン選手はアトランタで同じくM4-を組んでいました。このオーストラリアM4-はトムキンス選手を中心に息の長い活躍をしており、「オーサム・フォーサム(Oarsome Foursome)」という愛称まで付けられてすでに世界的に有名でした。「オアズマン4人組」とでもいったニュアンスのニックネームでしょうか。英語は苦手ですが(笑)。

しかし、彼らレギュラー4人組ともいえるメンバーは、前年に地元の五輪を意識してかクルーが分けられ、'99世界選手権でM2-などに種目を変更してきました(超有名なレッドグレーブとピンセントの乗るイギリスM4-との対戦をさけて、M2-に行ったのではないかと私はにらんでるのですが・・・。個人的には一度、トムキンスのオーストラリアと、レッドグレーブのイギリスとのM4-対決を見てみたかったです)。この世界選手権、アトランタで銅メダルのフランスM2-相手に、得意のコンスタントで悠々と3艇身をつける展開から、ラストスプリントが武器のフランスに詰められても余裕の2艇身近い差での圧勝で、シドニーでは最有力と思われました。
しかし、バウのジン選手が故障でもしてしまったようで、シドニー本番ではロング選手というサブメンバーに乗り代わっていたのです。その影響か、レースではいつものコンスタントの冴えが見られません。

代わってレースで果敢な攻めを見せていくのは、2レーンのイギリス(Sサール、Bコーデ)。整調のグレッグ・サール選手はバルセロナM2+で弱冠20歳ながら兄弟で組んだクルーでの金メダル、アトランタでもM4-で銅メダルと実力者です(ロンドンでも漕いでいてなんと40歳でM8+の6番を漕ぎ、銅メダルだったんですよ!)。バウのエド・コーデ選手は、前年レッドグレーブ&ピンセントの乗るM4-に若手として抜擢されて優勝を経験しています。雰囲気が何となくベッカムに似ているイケメン。このイギリスも相当なクルーです。
そして、5レーンのユーゴスラビアも伏兵ながらどんどん攻めていきます。シドニー五輪では、ユーゴスラビア、クロアチア、スロベニアといった旧ユーゴの国も大活躍を見せています。

3レーンのオーストラリアと、アトランタ銅メダルを始め多くのメダルを獲得してきた4レーンのフランス(Sロランド、Bアンドリュー)は、序盤は苦境に立たされ、勢いのある1レーンアメリカにもリードをとられますが・・・。
そして、レース中盤の1000mを過ぎて、ある一瞬を境に、レースの流れは一変します。

この続きは、ぜひ実際にご覧ください!そして、ゴールした後まで全部見てください!
びっくり、すごい、面白いの連続です。

シドニーM2-決勝
http://www.youtube.com/watch?v=Cym4_teegyM

しかし、You Tubeはやっぱり画像が粗いので、Rowingの技術を見るにはなるべく鮮明な動画を活用して下さい。
そういう意味では、ネットの動画ではなくてDVD、もしくは昔のビデオテープが良いと思います。ネット動画は、鮮明度だけではなくて、コマ数も粗いので、細かい部分や動きのスムーズさのニュアンスが伝わりにくいんです。お手本映像として使うなら、DVDやビデオがおすすめです。
おそらく、各艇庫にシドニー五輪あたりのレースビデオならば、昔の先輩が買ったものが眠ってるんじゃないでしょうか・・・。
シドニーオリンピックのVHSビデオテープは立教艇庫にはありますので、立教関係者はなるべくそちらをご覧になってください。
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